動物管理システムの抜本的改善こそ急務
1月25日、政府は、2008年度予算として、保健所に収容する野良犬/猫の餌3日分とワクチン代補助として3億5千万円を計上すると閣議決定しました——抑留期間を延ばして新しい飼い主を見つけるチャンスを与えるためとか。現在、年間、30万匹以上の犬猫が自治体当局により殺処分されています。政府はこの数字を10年間で半数に減らそうと考えています。2006年には、11万8千頭の犬と23万5千匹の猫が殺処分され、譲渡先が見つかったのは、犬1万4千頭(その大部分が子犬)、猫4,800匹にすぎません。
民主党の松野頼久衆議院議員(熊本県出身)は、今回の閣議決定にも貢献しました。松野議員は、これまでも、自治体によって収容され、殺される動物の境遇改善を継続して訴えてこられましたが、帰る場所のない動物の救済を求める氏のご尽力に対して、アークを含めた動物保護団体は感謝しています。
しかし、今回の決定は正しい方向への第一歩であるにせよ、さながら「生き地獄」のような場所に収容された動物に追加の3日を与えても、苦痛を長引かせるだけではありませんか。というのも、現状では動物管理の有効なシステムがない、つまり、譲渡先を見つけやすいのはどれか、どの動物は処分もやむを得ない・・・などと判定できる人間がいないことが問題なのです。(英国のシェルターで一般的に行なわれている)アセスメント(審査)は、新しい家庭に適応しやすいと思われる動物を外に出して、行動テストを受ける準備期間を最低1~2週間与え、その上で、専門審査官が行動テストを実施するというもの。最近私が目撃した福岡と徳島の場合、兵庫、滋賀、長野でも同様でしたが、里親募集のために展示されているのは大部分が子犬で、一般にはその方が飼い主が決まりやすいと思われています。しかし、子犬が成長して、新しい家族にふさわしい立派な成犬になる保証は必ずしもありません。子犬は十分に社会化する必要があり、適切な環境を与えるとともに、時間をかけた社会化訓練によって飼い主になじむものです。確かに、動物管理センターで働くボランティアが成犬を選び出して、きちんとした行動審査と追加訓練を行なうことがあっても、その数はきわめて限られています。一方、家庭での飼養に適した犬が何千何百頭も無視され、ガス処分されてしまうのです。
各地にある“動物愛護”センターに共通する奇抜な意匠や設計を考え出したのは、いったい、どんな部署の誰なのでしょう。どこも似たり寄ったり——ディズニーランド風の外観が訪問者を迎え、内部は“死刑”を待つ動物用アウシュビッツ。この部分へは一般市民は(税金で運営されているというのに)もちろん立ち入り禁止です。たとえば、徳島県動物愛護管理センターの場合、建設費が23億円、年間の維持費は1億円かかるそうですが、私どもが訪問したときは、祝日にもかかわらず、来訪者はまばらでした。他の施設同様、アウシュビッツを思わせる内部は、そこで働く職員の利便性第一に、動物には最大の苦痛をもたらす構造でした——濡れたコンクリートの床から逃れる棚も台もなく、すべりやすい床は足が弱った老犬には危険な上、天井の換気扇からは冷風が絶えず吹き出しています。動物が気持よく眠れるように床暖房を設置しても大した金がかかるとも思えないのに。どうして犬が野生のトラみたいに扱われなければならないのでしょう。確かに、中には凶暴で野性的な犬がいるとしても、大部分はおとなしいペットで、何の落ち度もない動物が、このような悲惨な場所で最期を迎えるとは・・・
これらの愛護センターは、また、“最新式”獣医療機器を備えていて、一般の獣医がうらやむほどです。しかし、たいして利用されることもなく、保健所勤務の獣医師は書類を処理するだけの役回りに甘んじています。(地方交付税から出される)3億5千万円を避妊去勢手術代にあててはどうですか——とりわけ新しい家庭に貰われて行く動物のために。なぜ、不妊処置をせずに動物を譲渡するのですか? 私どもが徳島県動物愛護管理センターに行ったとき、折しも、顎に大きな腫瘍ができた犬が収容されたばかりでした。来日中のメイヒュー・アニマルホーム看護師のジリアン・スコットさんは言いました——「メイヒューなら、直ちに安楽死されるケースですね」と。しかし、かわいそうに、あの犬も、「飼い主が引き取りに来るかもしれない」から・・・7日間も苦痛に耐えた末に殺されることになるのです。
今年2月に、私は福岡市の保健所で行なわれた「譲渡会」に出席しました。午前9時、ケージに入った子犬が数匹——中には生後1か月の幼犬も含まれています——玄関先のテーブル上に展示されました。催しは10時からで、特別に風が冷たい日だというのに。幼い子犬を暖かい建物内から連れ出して寒気にさらすのは、もっとも危険なこと。かわいそうに、子犬たちはケージの隅っこに体を押し付けて必死に寒さを避けようとしています。風よけに毛布などを掛けるという配慮もありません。私が主張したので、ケージは、人々が集まって来るまで建物の中に移されました。面接する前に子犬を見せたことも間違いです。やって来た人はみな子犬にやさしく話しかけます——ペットショップで衝動買いをあおる手口と似ています。その後、全員、建物内で約1時間のレクチャーを受けなければなりません。職員の話は、犬の飼育に必要なメッセージをもれなく含んだ適切なものでした。それから一人ひとりと面接するのだろう——と私は思いました。ところが違いました。希望者が子犬の数よりも多いため、職員が数字を書いた紙を帽子の中に入れ、当たりナンバーを取った人を「当選者」として選ぶやり方でした。言うまでもなく、子犬の大部分は予防接種も完全に済ませていないし、不妊手術を受けたものは皆無です。私がこれまでに訪問したことがある動物愛護センターの中で譲渡する前にきちんと不妊手術を済ませていたのは、ただひとつ、長野県の「ハローアニマル愛護センター」だけでした。長野県が実施できるのなら、他の県でも可能なはずです。
敢えて厳しい意見を述べるのも、私どもは経験からわかっているからです——フレンドリーな成犬を家族の一員に迎えるのは賢明な選択だし、新しい飼い主が避妊/去勢手術を約束しても守られないからこそ早期不妊処置が必要なこと、そして、里親希望者を選別して人物とライフスタイルに適した動物に引き合わせるのが何よりも重要であると。その気になれば実現できるはずです。そして、私たちに(徳島県のように)自由に使えるお金がありさえすれば、今よりも多くのことを達成できるでしょう。しかし、残念ながら、官僚政治の車輪はギーギーときしむばかりで、遅遅として進まず、変化を求める役人が多数いるとしても、何も行動を起こせない状態なのです。
私は、前回、アークの季刊誌「ニュースレター69号」で大阪府の「森ノ宮センター」を取り上げ、「大阪府がシェルターを持っていたら、もっと多くの動物を救えるし、新しい飼い主を見つけられるだろう」と述べましたが、今はそうは思いません。「愛護センター」全体の考え方が変わらない限り、大阪府は、システムが進化するまで待つ方が賢明です。システム変化とは、動物管理センターが、本気で殺処分数削減に努め、不妊手術を徹底し、新しい飼い主への譲渡件数を増やし、行き場のないすべての動物に人道にかなった基本的ケアを提供することに他なりません。

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